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那覇家庭裁判所 昭和48年(少ハ)3号 決定

少年 l・S(昭二八・三・一〇生)

主文

本院生を中等少年院に昭和四八年六月一〇日より同年六月三〇日まで収容を再継続する。

理由

(一)  本件申請の要旨は、

本院生は、当裁判所において一九七二年一月一三日少年院中等科へ送致する旨の決定を受けて沖繩少年院へ収容執行中、更に昭和四八年四月二日、同少年院に同年六月九日まで継続して収容する旨の決定を受け収容執行中「同年六月一〇日の満期退院の準備をしていたところ、去る五月二九日の実習中にドライバーの柄のプラスチックの部分を約二センチ切り取つて六等分し、俗称“ミサイル”を製作して隠匿所持し、もつて紀律違反をなしたので仮退院の期間も見込んで同年六月一〇日から六ヶ月間同少年院に収容再継続を求める。」というにある。

(二)  よつて、一件記録、当裁判所の調査、並びに本院生、保護者及び少年院教官の各供述によれば、本院生は窃盗保護事件で一九七二年一月一三日当裁判所において少年院中等科送致決定を受け、沖繩少年院に収容執行中喫煙等の反則行為により昭和四八年四月二日当裁判所において同年六月九日まで収容継続する旨の決定を受けたこと、本院生は上記収容継続決定に基き、既に成年に達していながら引続き同少年院において収容継続期間満了の直前(同年五月二九日)前記俗称“ミサイル”を製作所持していたために謹慎一〇日間の処分を受けていること、本院生の院内における従来の生活態度は別段問題なく、処遇段階も一級のクラスにあること、本院生の家庭環境は割合良好であつて本院生の帰宅を待ち佗びており、帰宅後の就職についても兄を通じて手配してあること、本院生は長期収容のため意気沮喪しかねない状況にあること、がそれぞれ認められる。

よつて案ずるに、本件反則行為自体は犯罪的性質を有する非行とは直に言えないが、本件物件の製作、使用の行為態様・使用目的等は不自然で一般社会においては到底認容できない特異性を有しており、その製作・使用を契機として他の非行行為を誘発する危険性をはらんでいるばかりか(本院生は昨年三月頃も同種反則行為をなしていながら、去る五月下旬発見除去されるまで秘匿していた)、他の院内外の者に及ぼす影響は否定できないところである。

本人の性格・行動傾向等の諸事情を勘案すると、本人を今しばらく継続して収容して良好な生活態度をおしすすめるべく矯正を加える他なきものと認める。

而して、その収容継続期間の相当性について考えるに、本院生の収容期間、家庭状況及び本人の反省、精神的成長その他諸般の事情を斟酌すると、上記行為に対しては同院において謹慎処分がなされており、それ以外に長期収容継続の不利益を科するのは酷に失し、むしろ本院生の収容継続期間は短期間にとどめて社会復帰の希望を持せ、一般社会規範の意識をより一層自覚せしめて将来の再犯を予防し、その犯罪的性格矯正のため昭和四八年六月一〇日より同年六月三〇日までの短期の期間収容を再継続することが相当であると思料する。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 浜川玄吉)

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